学部長としてのメッセージ – Hiroshi Kano

学部長としてのメッセージ

大学での学部選択は、その後の、社会人としてのスタートポイントを半ば決めることになります。多くの学生にとって、学部の選択が人生での最初の岐路となることも多いでしょう。日本では、学業の適性を判断する基準として、文系・理系という分類に当てはめることがよくあります。情報理工学部のカリキュラムには数学系の科目が多いので、その意味では、情報理工学部は理系学部です。一方、IT企業と呼ばれている会社の採用状況を見ていますと、情報系の卒業生を多く採用していますが、一方で、文学や経済・経営などの卒業生も、一定数、ITエンジニアとして活躍しています。その理由は、プログラミングの習得は、一般的な言語の習得と似た側面があるということと、情報技術を社会で役立てるために必要な発想は、文理を問わないクリエイティブな考え方から生まれることにあるように思います。情報を使って、社会で自分が活躍できる姿を想像できるならば、あなたは情報という学問に適正があるのではないでしょうか。 

国内の大学における情報系の学部教育は概ね1970年頃に始まっています。国立大学の工学系学部に情報工学科などが設置され、コンピュータのハードウエアとソフトウエアを教育していました。京都産業大学は、1965年の開学当初からコンピュータ教育を実施しており、1971年に計算機科学科を設置しました。その後、いくつかの学部や学科の変遷を経て、2018年に現在の情報理工学部が設置されました。このように、本学の情報理工学部は、情報系教育において、日本でも屈指の伝統を有し、情報学の本流をなす大学であると言えます。 

大学における情報教育は、コンピュータという装置を勉強することから始まっています。その後、ネットワーク技術や通信技術などのインフラ系の技術を取り込みながら拡張してきました。現在はAI・データサイエンスなどのデータ系の学問が情報理工学の一つの重要な分野になっています。情報の教育分野が広がるにつれ、専門科目の数が徐々に増えていきました。その結果、最近では、教育カリキュラムの見通しが悪くなり、学生が履修科目を選択することに難しさや迷いが生じるようになっていました。これを抜本的に解決するための方策として、情報理工学ではコース制という履修モデルを採用しています。 

情報理工学部の専門科目の総数は78科目あります。必修科目が11科目ありますので、残りの67科目から32科目程度を選択して履修します。このように選択の余地が多数ある科目から、学生の資質・指向に合わせた履修モデルを提供するために、ネットワークシステムコース、情報セキュリティコースなど10のコースを設定しました。学生は、自分の専門分野を決めるために、ひとまず、コースを選択します。コースという枠組みの中で、さらに選択科目を厳選して履修することで、自分のイメージにあった勉強ができるようになっています。情報理工学部のコース制は、2022年度で一旦、完成しますが、これからも時代に合わせてアップグレードしながら、より良いカリキュラムを提供していく所存です。 

情報技術が産業に及ぼす影響も大きくなり、ITエンジアの総数は100万人を超えるオーダになっています。それでもIT人材は、非常に不足していると言われています。その影響か、他大学における情報系学部の新設が相次いでいます。また、IT業界も比較的、好況なようです。世界的に見れば、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)を代表とするIT企業が世界産業のトップに君臨しています。情報理工学部では、入学生の皆さんを、世界で活躍する情報人材となるべく教育する機会を用意してお待ちしています。